アトリエ青 Atelier Blue

星つりじいさんの日々の暮らしをお届けしています

重くて軽い

自分にとって今まで一番重いと感じたものは何か? 問うてみると。。。

40キロを超えて飛行機に積載拒否されたキャリーバッグ。

映写室まで肩に担いで運んだ映画の35ミリフィルム(20〜30キロはあり、× 何千本)

これらは単純に重かったなぁという記憶が確かにあります。

物理的重量に比例して、重く感じるのは当たり前ですが、「気が重い」というように精神的な負荷も重さで表現します。これらの様々な思念やプレッシャーも数多く経験して来ましたが、数値化は出来ません。

色々思い浮かべて、物理的にも精神的にも圧倒的に一番重かった記憶として刻まれているのは、産まれた長男を抱っこした時です。

乳児なので、物理的重量は3キロ程でしたが、命の重さ、親としての責任感などが一気に手に乗った時の重さは、生涯忘れません。それでいながら一切の憂鬱な感じや、悪い意味での精神的負荷とは違い、重さに反比例して綿のように軽かったのです。

それは、膨らむ夢や希望、奇跡を目の当たりにして全身を風が突き抜けたような清々しい感覚でした。「重くて軽い」この奇妙な感覚を私が産まれた時にも父親が感じたに違いないと、そこで父親の半分をようやく理解した気がしました。

私が27歳の時でした。それから30数年が経過して、すっかり大人になった長男にはこんな話はしようもないのですが、この感覚を絵にしたいと思いました。

 

先日ノープランで描いた「ようこそ僕の町へ」

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この時に、普段は出来るだけしない洗い(脱色)を部分的に使う事で、出来損ない感を出せたのが面白かった。

 


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なので、今回はそれに加えて、スムーズなグラデーション(滲み)を排除する事だけ決めていました。

透明水彩の技量を見せびらかす意味で、多くの画家がやってしまう美しいグラデーションは技法の見事さや器用さに目が行く意味で、邪魔な場合があると思っています。

 

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筆ムラを出すことで、画家の息遣いや、人間の不完全さを肯定し、不快感一歩手前で、定着させてみたかったのです。

画面下の犬の顔の様な家が自分では気に入っています。これも流れで出来ました。

更に洗いを掛けたり、微妙に定着した絵の具を水で少し浮かすなどして、徹底的に洗礼されていない画調に持って行きました。

 


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出来上がってみると、イラストレーションはなんだか絵画的になったのです。これは思ってもみなかった結果です❣️

また、今までの仕事で初めて掴んだ感触です。

 

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サイズはA3なので小さいですが、この画風であればB全ポスターサイズで描いても、成立しそうに感じました。

イラストは小ぶりの方が需要はありますし、それを度外視しても実際に可愛くて、私自身も愛着が湧きます。

でも、大作は非常に難しいと思い込んでいましたが、突破口が見えた気がします。

人体表現や犬などが全て出鱈目な形で、「これでもプロか?」と呆れる方が多いと思います。それは立派さ、出来栄え、完成度などの私が嫌う絵の要素を抜き去るためです。

100パーセント妄想とイマジネーションで埋め尽くして、長男を抱っこした時の重くて軽い感じだけを出したかった。

それによって普遍的な子どもへの愛情と感謝が表出していれば、私としては仕事が出来たことになります。

フランシス・レイの楽曲を当ててショートムービーにもしたので、ご覧下さい👇

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果たしてどうかは、観た方に委ねます。