アトリエ青 Atelier Blue

星つりじいさんの日々の暮らしをお届けしています

平原で

大人の水彩画教室で頻繁に出て来る質問に「ここはどんな色を塗ったら良いですか?」があります。

それに対して子供は「好きに描いても良いですか?」という質問が一番多いです。

この事から理解するのは、大人は単純に判断基準がない、また自分では出来ない場合も含めて、根本的に正解や模範があるのだろうから、それを外したり、間違ってしまって指摘をされたくないという思いが強いのです。

ところが、子供は全て好きに出来る発想は出て来るけれど、それらを勝手にしてしまって大人や先生に怒られるのは嫌だから事前に許可をもらいたいだけなのです。

両方とも学校での美術や図画工作の授業で刷り込まれた教えによって醸成された弊害です。元来、大人も皆んな子供時代は好きに出来る発想が出た筈なのです。でもきっかけを失われた。


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絵の教育では子供は幼稚園の時には優劣を付けないで育てられます。小学校に上がると徐々に上手い下手が分かれて行くシステムに乗せられます。そこで出る杭は打たれ、課題を理解して上手く処理出来る子が良しとされ、皆んなの模範として掲げられます。

中学校では、好きで絵を描きたくて美術部に入っても、アカデミックなデッサンの中途半端な指導を受けるか放任されるかのどちらか。美術の時間は好きだったけど、もっと上手い人がいて、自信を喪失する体験ばかりを積み重ねて行きます。

この様に育った方が成人して時間の余裕が出来て絵を習おうと教室にやって来ても、学生時代のトラウマや実体験から抜け出せないでいるのは当然です。

歳を重ねる程、コンプレックスと不安で固まってしまっており、ほぼこれらを取り去るのは困難です。

紙の大きさ、作画に掛ける時間、使う画材、描きたいものが全て自由で然るべきです。教育現場では制約があるにせよ、描きたいものだけは自由に出来る筈。

私の親友でもあるホリユキエさん☟はこの点、好奇心旺盛で子供以上に柔軟な発想で作品を作られます。


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これは類い稀なる資質ですね❗️

 

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誰でもひとつは小説が書ける」とプロの小説家が言いますが、これは私小説の事を指します。

個人史、自分の体験、とても印象的な記憶、今の人生観を体験を交えて数人の登場人物を通じて描けば作文の長〜い感じで私小説が出来上るのです。

しかし、全く自分以外の人物を描けるか、行動原理を想像できるか、オリジナルなストーリーを生み出せるかとなると、大変難しい。

プロはこれを書くことが出来るのです。

しかし、絵の長所は文章の様な起承転結や構成が不要であり、一瞬のパッションや、記憶の残像、直感により、いい意味で簡単に複数枚を描けることです。

ストーリーがあろうがなかろうがどっちでも良いし、意味があろうがなかろうがどっちでも良い。テーマも同じくです。

言うなれば、生理現象の食べる・寝る・排泄に近いものです。

排泄作用を意識すると、汚物と呼んだり、汚くて忌み嫌う人が多いですが、食べるのと同義で、排泄は生そのものなのです。

肉体上の排泄をしなければ死に至りますが、精神上の排泄も同じく、出来ないと精神が死にます。精神的な排泄行為が絵だと私は考えています。

造形探求や芸術家を気取る前段階で、ひたすら思いの丈をぶっ放す!

教育はそれをベースにすれば、及第点も模範も何も基準がない自由の平原をひたすら走れるのです。

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戦時中などは、プロパガンダで「戦意高揚のために描け」という悲惨な実体験を通過した方などは、もはや絵は思い出すだけで辛い行為となるでしょう。

自由を奪うのが教育的配慮だと刷り込まれてしまった大多数の大人は自由には戻れません。檻の中に収監されて管理される方に安心を見出してしまったからです。

それでも、いちるの望みに託して檻から外に出られるように援護したいとは思っています。

現代では、小学生の4、5年生くらいなら、教育的配慮の呪縛から解き放つ事が比較的簡易で、中学生などになると、ある程度の時間をゆっくり掛ければ可能。

そして、高校・大学になれば精神年齢的には最早大人と同じでも、違う価値観を受け容れる余裕を持っています。

この層に対して凝り固まる前にアプローチをしていく事業を水面下で進めています。

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平原で走る本来の姿へと引き戻し、視界が開けたら自信と喜びを抱えて生きていけると思います。