アトリエ青 Atelier Blue

星つりじいさんの日々の暮らしをお届けしています

小津の個性①

私が敬愛する 小津安二郎 監督は60歳の誕生日が命日というあまりに奇特な命運の方です。遺作となった「秋刀魚の味」の次回作「大根と人参」も脱稿しており、まだまだ撮れそうな絶頂期に他界された事は惜しくてなりません。

  ※後日追記「大根と人参」は構想段階までであり、脱稿したというのは間違いでした。訂正致します。

私が生まれたのがその翌年ですから、リアルタイムで小津作品を観た事はなく、むしろ既に死後世界的な評価を獲得されていた学生の頃に初めて小津作品と出会ったのです。代表作として一番有名なのは白黒映画「東京物語」です。


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本作は観れば観るほど感銘が深まるのですが、それは鑑賞するこちら側が年齢を重ねる事で視線が変わるせいでもあります。それに、本作はまだ小津が40代の時の作品であり、内容からしてどうしてその若さでこんな凄い作品を撮れるのかも年々不思議に思えて仕方ありません。

東京物語」以降、カラーの時代に突入してもしばらく白黒で撮り続けるなど、古風な作家と勘違いされたらしいですが、まだ総天然色という表現をされていたカラーの現像技術などが機が熟しておらず、慎重に研究・観察をしていたからだと言います。

それは小津が風潮や流行りに安易に乗るのではなく、作るなら自分が納得したものを世に出したいという信念の持ち主である事が伺えます。

 


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初のカラー作品となった「彼岸花」では色(特に差し色の赤)に対する執着が随所にあり、そういった色に対する画面構成上のこだわりや扱い方は遺作まで一貫しています。


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当ブログでは以前「コンポジション」で、少し小津に触れてみたことがあります。それがこちら▶︎ https://yasunariart.hatenablog.com/entry/2019/05/16/090536

とにかく、晩年になるとそれが狂気か遊びか判別できない程、ワンカットへの執念がみなぎっており、淡々と進む物語とは異質の時空が同一画面に同居している様、それこそが小津の個性となって行くのです。

他にも他の映画作家とは一線を画した独自の映画美学は今なお他の追随を許さず、絶大な影響力を持って先頭を行きます。

次回は、小津の独創性が絵画とも大きな共通点をもつ話をしたいと思います。