アトリエ青 Atelier Blue

星つりじいさんの日々の暮らしをお届けしています

掴んで消えた

公開講評をひと休みして、水彩画教室作品展に出展した自作をアップします。

タイトル「月取りゲーム」2015年に一度アップした事がありますが、描いたのは更に遡り、2013年か2014年だと記憶しています。インチサイズ(A4よりひと回り小さい)程の小品ですが、気に入っておりずっと手元に残っています。

 

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本作はクレヨンを重ね塗りして深紅の空を着彩したり、削って下地の黄色を出したり、画面下の建物のパースを全て歪ませるなどして、完全に現実(リアル)とは別の時空に見える様にしています。

これらは全部即興で思いつくまま作画したと思います。

左右から画面に入って来る男の子は大きな作品ならば身体全体を画面に入れるのですが、端で隠れて(切れて)しまう様にする事で、空間の広がりを想像させる事ができます。

月にぶら下がった女の子は手を離しても浮くのか?浮遊感・飛行感が強い男の子に比べて、多少の重力を感じる気もします。

もしかしたら手を離すとゆっくりとですが、街に下降するのでは?落下ではなく下降、それはお別れのイメージです。

そんな不安というか、儚さを抱かせることで戯れて楽しいというより、掴んだと思った瞬間に目が覚めて消える夢の様な印象にしたかったのです。

というのは無意識に描いた物を、後付けで自らが解説しているに過ぎませんし、私の子供時代の異性に関しての距離感とシンクロした作品である事は間違いありません。

 

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小品コーナーとしてピアザ淡海にある大理石のテーブルに同居させました。このテーブルには4名の作品が乗っています。原画を是非チェックしてみて下さい。

公開講評⑥

各受講生の作品をブログで講評するのは初めてですが、今回はチラシに出展者を明記しましたので、一人づつコメントをして行く公開講評その⑥です。

寺嶋夕美さんの左からタイトル「予定のない午後の時間」「スモークツリーの下で」「あ・の・ね・・・」3点。これらの特徴は空間と時間が主題になっているところです。これこそが作者の個性であり、自然体で作画に臨んだ時、事物(モチーフ)を描いていたとしても、画面から流れてくるのは空間と時間なのです。

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時間に追われたり、急かせかした気分から開放されていないと、こういう絵は描けません。裏返せば何かに追われていても整理出来る能力があれば描ける訳ですが、これが私には出来ません。プロを自称していても出来ないのは、障害のせいだと片付ける様にしていますが、元来趣味として水彩画と向き合うには理想的な間合いと言えます。

「予定のない午後〜」は一切のレクチャーを受けずにご自身で描いて来られましたが、イラストレーターの資質が垣間見られ、今後の展開が楽しみな一枚です。「スモークツリー〜」は画面の奥が白い壁で塞がれており、通常ならば、空間を圧迫して狭い印象になるのですが、無人のベンチに誰もいない事で人物のいた気配、もしくはこれから誰かが腰掛けるのでは、、、等々の見えない人を想起する事で時間が流れるため、風通しのよい空間に感じるのです。

ぬいぐるみと対話する子供は、写真が出来上がり過ぎていたので、絵にする場合に写実かイラストにするかで迷いました。でも、この中では一番習い始めに近い作品でしたのでオーソドックスな透明水彩の技法を試してもらいました。逆光は透明水彩の魅力が出し易いモチーフですが、難易度は非常に高いです。それでも丁寧に仕上げておられる事に好感が持てますね。

この他にも数点小振りな作品を出展されていますので、会場でご覧下さい。

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