アトリエ青 Atelier Blue

画家・アートディレクター 石田泰也の日々の活動風景をお届けしています

オータム

「国際水彩画交流展」が19日に閉幕となりました。緊急事態宣言、台風などが重なる状況の中にも関わらず、ご来場くださった方々に心より御礼申し上げます。展示物の搬出を終えて、翌日は10月に控えている「水彩画教室作品展」の補習を終えて家路に着きました。

絵のことを24時間考えている割には、なかなか絵を描かないのですが、先日Netflixで観た小津安二郎監督の遺作「秋刀魚(さんま)の味」の色が今ひとつだったのが、ずっと引っ掛かっており、衝動的に北米クライテリオン社製のblurayを4,500円で注文しました。クライテリオン社は世界の映画遺産を最高水準の技術でフォーマットし、作品をリスペクトし再評価に貢献する事で知られるソフト販売会社です。

秋刀魚の味」は自分でも昔映写したし、DVDも持っていますが、色々ネガ自体に問題があってベストコンディションで未だに観れないままになっていました。クライテリオン社はどんな修復をして当時の色を出すのか!?それをどうしても確かめてみたかったのです。Amazonでポチって、湖西線の車窓を見ると琵琶湖の対岸から登るピンクの月が見えました。

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空と湖面の色合いのバランスに息を飲んで、手早く写真に収めました。琵琶湖に夕霧が立ち込めているのに黄緑を使うといいな。空はビリジャンを薄く敷いてからオペラとブルーを大まかに混色して掛けようか。それにしてもこの空は「秋刀魚の味」の冒頭に出てくる野球場のナイターのショットのライトと空のコントラストに似ているなぁ。。。

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大体私の頭は終始そのような思考で映画と絵と現実の空間を結んでみたりするのですが、こんな偶然はまず、10年に一回あるかないかです。ところが、セルビアで暮らしているとほぼ毎日あるのです。この歴然とした差は一体なんなのか。

とにかく、この車窓の眺めはドキッとして、心に沁み込んだのです。帰って翌日となる今日、早速クライテリオン社の「秋刀魚の味」が手元に届き鑑賞したところ、残念な事にNetflixと全く一緒でした。近年日本でもデジタル修復をされたので、結局出どころは日本のイマジカ社と松竹の共同プロジェクトで、それの海外版をクライテリオン社が作成したに過ぎなかったのでしょう。

それどころか画面の水平が3度ほど左肩が落ちており、オープニングからガックリ来たのでした。小津作品は垂直のラインが非常に特徴的で、しかも晩年はカメラが移動せずに全ショットが固定撮影なので、全部の一コマが動く絵画となっています。でも物語が進むにつれ関心は役者の顔などに目がいくので気にはならなくなりました。

また英題は「An Autumn Afternoon」(秋の午後)となっており、これは初めて知りました。「秋刀魚の味」を直訳しても海外では理解されない事もあって、この英題になったのでしょうが、主人公である壮年の父親が長女を嫁に出して、結婚式の終わった晩に一人もの悲しく切ないシーンを迎えるストーリーを「秋の午後の一日」で括って、さらりと表現しており、昨日私が見た琵琶湖の月も正にその様な秋の感じだったなぁと噛みしめたのでした。4,500円は最初ちょっと痛い出費でしたが、ちょっといい事を知る上での必要経費だなと思えました。

秋刀魚の味」はもうかれこれ10回以上は観ていますが、これからは車窓から見た琵琶湖の月ともシンクロして自分の中でどんどんイメージが膨らんで行くと思います。ピンクの月は嫁に行った岩下志麻を象徴する円とイメージが重なり、以後、感情の入った抽象画を描く力をもらえた気がします。

映画について興味のある方はこんな動画がYouTubeでご覧になれますので、どうぞ。

https://youtu.be/OvqXIbN98GA