昨年作画総数180点の中から自選ベスト10を公開します。いつも思うのですが、自分で描いた割に描いた記憶そのものが薄くなったものに魅力を感じます。気負わずに描いた場合おおよそそうなります。何度見ても魅力を何処かに感じるものが、私にとっての佳作だと思います。
中庭のカフェ、蚊が飛んでそうだな〜と思いながら描いた事だけ覚えていますが、どうやって描いたか覚えていません。その分温度と湿度が表現出来ています。
ベオグラードの路面電車。重い鉄の塊が緩い上り坂をカタツムリの様に登る様、初めて公開された映画リュミエール兄弟の「電車の到着」を思わせる移動の魅力が出ています。
ペン一本で日向と日陰、靴底を通した石畳みの肌触りが描けています。
画面が心象を超えて幾何学のリズムに転換されました。幸福感に包まれています。
いい加減(良い加減)さの魅力が出ました。はなから真面目にやる事を放棄したスピード感が良いです。
これ程二度と描けない画面はないです。破綻の割合が限界ギリギリまで行っている爽快感に満ちています。モチーフを飲み込んで描写ではなく定着しただけという粋さ。
儚さの中に夢遊病の様な景色が確かに存在しています。病んで伏せった病床でのみ見えるものを可視化。
スケッチの様でいて、パースが存在しないに等しいけれど街は本物の建物がひしめいていて、その中に暮らしの気配もあります。
この世とは思えない狂気の様な記憶の襞に潜った様が表出しました。
これは写生的で、一見淡白そうに見えますが、インパクトや強さがないのに決して弱くない確かさがあります。ベスト作品の中で一番アマチュア感がありながら、絶対に辿り着けない境地です。この永遠の空は描けません。
以上、自画自賛の批評家目線で自作を語りましたが、3日ぐらいで気が変わります(笑)