アトリエ青 Atelier Blue

画家・アートディレクター 石田泰也の日々の活動風景をお届けしています

こんな夢を見た

「こんな夢を見た」で各8話の短編が始まるオムニバス形式の映画、黒澤明監督「夢」(1990年)。「日照り雨」「桃畑」「雪あらし」「トンネル」「鴉」「赤冨士」「鬼哭」「水車のある村」の全8話で構成されています。

本作を初めて観たのは26歳頃で、初見は劇場に行かずVHSで鑑賞しました。前作「乱」もだるかったので、映画館で鑑賞する気になれなかったのです。

実際だれ切って弛緩した作品という印象で「もうネタがないのか?」と、黒澤監督の限界をも感じました。

ところが10年程経ってDVDで見た時に、やはりだるいながら映画美術の気合いや凄い合成場面がたくさんあり、撮影も半端なく当時の世界水準の先端を行っていると感じました。

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それから更に20年、今度はブルーレイを安価で発売しているので、三度目の鑑賞をしました。私は絵描きになっている歳です。

そこで、ようやく黒澤明の物凄いパッションがフィルムに叩き込まれている傑作だと思い直したのでした。今ではフィルモグラフィーの中で重要な作品だと考えています。

本作は黒澤明自身が寝ている時に観た夢を元に自ら脚本・監督・編集をしています。そのせいも手伝っていい意味で正直なありのままのストレートな表現に胸を鷲掴みにされます。


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人気監督であったり、興行成績の呪縛からある程度開放されて自由に作った清々しさも感じます。これらを全面的にサポートしたのが、アメリカ映画界のスティーブン・スピルバーグフランシス・フォード・コッポラジョージ・ルーカスでした。

1.000円程でブルーレイが購入出来ますので、買ってみて下さい。その前に黒澤明の映画5本程度は観た方が良いとは思いますが。

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映画「夢」の話をするのには、他にも訳がありまして、私自身が毎晩強烈な悪夢を見ます。それも大体オムニバスというか短編を数本見るのですが、大概は取るに足らない夢です。

しかし、かなりの頻度で夢の中で他者の画家や造形作家の作品に感銘を受ける事があります。夢なので非現実的なものも多く造形は非常に困難だろうと思える作品も多いです。例えばガラス細工とランプと絵画を融合したものであったり、レザーアートであったり、建築であったり、街であったりもします。

それらは夢だったかと言って済ませれば良いわけですが、昨日は透明水彩画の風景画を大量に見ました。

それらは新聞に100作品程紹介されていて、展示会も開催しているとあって、画家ともお会いしたりして、目が醒める思いを突きつけられました。

なんというか、素直な絵で、風景に憧憬を感じてただただその自然の在り方や人の暮らしも含めて、ひたすら愛でているのが伝わって来たのです。

そこには気負いがなく、描かせて頂いているという画家の心情しか見えて来ませんでした。風景を自分のものにするのではなく、自分がその風景に出会えて感銘を受けてやがてその中に吸い込まれてしまう直前に仕上がったという感じでした。

画家の存在が危うくさえあるのですが、好意的に捉えると画家は何も創造しておらず、「全ては万物に既にある」それを絵を通じて他者に気づかせる役目をただひたすらに果たして消えて行く感じに感銘を受けました。

きっと、私に必要な気付き・学びが夢のお告げの形で自覚したのでしょう。このことに私は夢の中だというのにガツンと頭を叩かれた気になって、今もなお余韻が残っています。

希望は夢で感銘を受けた作品のイメージは、自らの夢なので、結局私のイメージだという事です。でも夢というのは儚いもので時間の経過と共に忘却します。

それでも100枚をザッと見た事で、必ず今後の課題として活かされると思います。

 

ちなみに黒澤明監督作品どですかでんという興行が惨敗で以降、東宝から半分干される目になった作品があります。


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これもとてつもない傑作です。乞食の親子が死んだり、どう考えても一般受けしないスター不在の映画で、「よくこれを公開したな。」と思いますが、本物のアートの真髄があります。それほど異彩を放っています。

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好き嫌いは真っ二つに分かれるとは思いますが、私は最高傑作だと信じて疑いません。


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