アトリエ青 Atelier Blue

星つりじいさんの日々の暮らしをお届けしています

仮画と本画の比較②

「星つりじいさん」仮画と本画の比較の続きです。

大方の仮画と本画の違いの話は前回しましたので、引き続きそれに沿ってご覧下さい。


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仮画は場面設定や物語の流れを落とし込むのに対して、本画は一枚の絵として鑑賞に耐え得る様にしたいです。

また前後の絵との視点や流れが一定の継続性があったり、時間的に連続性がある場合はトーンをあまり変えないようにします。


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例えばこの橋の下の群衆は、同一空間で刻が流れてやがて夜に突入します。その時間によって親密度や一体感がで始めるので、人物をひとかたまりに描いて更に密集させました。


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また通常夜空が青くなるのでは面白くないので、橋の下自体を青くしました。このような濃度の青は清涼感が勝るものですが、温かみも感じさたい。

その為に僅かに見える対岸の景色は感情がないように配色しました。人の集いがほのぼのと温かく見えて来て青にも温かみを感じるという仕掛けをしています。


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この絵は台本には当初ありませんでしたので、仮画も存在しません。これはギター弾き役のGENさんが「大きな古時計」を唄うのを見て聴いて、発想が出ました。コラボレーションならではの醍醐味です。


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わいわいと賑わう場面は、街や広場など絵本に出て来た場所が全て賑わい唄うようにしました。

これは一歩間違うと「◯◯フェア」や「◯◯フェスティバル」のポスター用の原画に見えます。物語の中に埋没したので何とか回避出来ましたが、非常にステレオタイプの構成なので、要注意ですね。

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この画面も仮画にはなく、どうしても絵として必要に思えて書きました。


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別れのシーンは映画的にしたくなって、通りのカフェではなく、駅に場所を変え、更に心象をコラージュ的に表現するため列車内と外の境界をなくすという事に挑戦しています。

これは結構難しいのですが、難しいだろうなと感じさせては失敗で、想いが交差するイメージだけ受け取ってもらえれば成功なのです。


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皆んなで星を釣る場面は先の「古時計」の歌で登場させた街の時計塔に舞台を変えました。この絵は私自身とても気に入っており、GENさんの選曲がなければ出ない発想だと思うと、感謝が込み上げて来ます。

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この子供が虫などになっているのも仮画には全くありませんでした。この絵は一時間で描いていますが、描き始めるまでに4日は悩みました。


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クライマックスの星を撒くシーンは仮画は先の釣っていた場所で撒いているに過ぎませんが、台本の完成稿では風船の気球に乗って撒く事に変わって、最終的に絵を描く時に風船売りの自転車が一番良いと気が変わりました。


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ラストのシーンは仮画は2枚あったイメージを集大成的に一枚の絵画にしたくなり、一番迷いました。

この本画は実に穏やかでほんわかとしたムードに包まれていますが、私はほんわかとはかけ離れて、数日寝ても覚めても必死でイメージが降りるのを待ちました。作画時間も一番長く掛けたと思います。

ステージショー「星つりじいさん」初演と併行して作成を始めた「星つりじいさん」動画版も編集に編集を重ねて最終完成形が実はあります。これを期間限定で配信します。期限は2022年9月30日限りとします。

「星つりじいさん」動画版  https://youtu.be/nYFhjE9kUlE

仮画と本画の比較の考察についてはこれで終了ですが、既に何らかの形で「星つりじいさん」を鑑賞頂いた方は非常に限られています。この機会に興味をお持ち頂いた方にご覧頂ければと思います。

期間限定については、今後もライヴや上映会として巡演していく為なのでご了承下さい。