アトリエ青 Atelier Blue

星つりじいさんの日々の暮らしをお届けしています

手作り

「星つりじいさん」作画作業も佳境に入りました。後はクライマックスシーンを描いて、物語は大団円を迎えるですが、その一枚前のページを描きました。

この仕事に際して、最初に私の風景画とかと同じく透明水彩で描く(ポスターカラーや白絵の具を使用しない)ことを鉄則にしてみました。但し、クレヨンはありに。

そもそも「ポスターカラーってどんな時に使用するの?」という方に簡単に説明します。ポスターカラーはその名の如く手描きポスターのレタリング(文字)や、下の絵のすみれ色の夜空などマットな質感の平面を塗る場合に適しています。

今では全て手描きのアナログポスターなど何処にも出回っておらず、イラストレーターでデジタル作成されるのが当たり前の時代です。

でも私が中学生の頃から大学まではポスターにレタリングは必須でした。ゴシック体や明朝体などポピュラーなものからオリジナルの字体(今でいうフォント)で必死で時間を掛けて描いたものです。

グラフィックデザイナー・ファッションデザイナーなども皆んなポスターカラーをよく使いこなしていたでしょうが、今は99%デジタルでしょうね。

ポスターカラーは乾燥したら塗ムラ・筆ムラが出にくいという特徴を備えています。

そして、それには白絵の具を混ぜるとより効果があるので、深い色でもわからない程度に少し白を混ぜておくのがテクニックです。という事は色彩論をある程度知っている方はピンと来ると思いますが、彩度が落ちる 訳です。

私は筆ムラを受け容れて彩度を保つ方を選んだという訳です。一目瞭然ですが、凄い筆ムラが出ていますね。この一見、下手な風に感じるのも手描き感を出すには逆に効果的だと思います。

昔の私なら、使い分けて、夜空はマットに塗ったでしょう。その方が完成度が上がりますから。でも、完成度を下げて行きたいというのも最近の私の絵の傾向です。人間的にしたいと言い換えれば良いでしょうか。


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そして星の表現は透明水彩のマスキングでは洒落てしまうので、着色した水彩紙を無骨に切って貼りました。飴玉の様な星にしました。

時計の針や屋根なども、行き当たりばったりでドンドン貼りました。

貼っても透明水彩である事は一貫しています。そしてマスキングしたのは、釣り糸だけです。

 

貼る楽しさにスッカリはまってしまい、数日前に既に描き上げていた場面も好き放題に貼る事にしました。

駅舎の屋根。 入り口の壁の厚み。 歩道橋の質感。 まん丸い樹木。 車内の荷物。 鞄の持ち手。 極め付けは中央の人物のシャツの色。これも気に入らないので貼りました。帽子も色を変えたくなり貼って、だいぶん気にいった感じに変わりました。


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手描き風デジタルという最悪のソフトやアプリがあります。「その内に写真をそれで絵にしたら絵描きの仕事がなくなるんじゃないですか?」と言う方がいますが、私は益々、絵描きの存在意義が高まると考えています。

手描きと手描き風は似て非なるもので、完成度より手作りの味にどんどんシフトしたいと思います。絶対にデジタルはこれに追いつけません。

これ以降の場面については展示会が落ち着くまで掲載しませんので、会場で原画をご覧下さいね❣️