アトリエ青 Atelier Blue

画家・アートディレクター 石田泰也の日々の活動風景をお届けしています

水彩画が出来るまで-母の場合⑤-

すっかり透明水彩の虜になった母親とは、私が日中自宅にいる時はほぼ一日2.3時間一緒に絵を描くのが習慣化して来ました。

とにかく明るい絵、憧れる庭やカフェなど嗜好が明確な母。しかし、明るい絵だからこそ影に透明水彩の妙味が潜んでいる事を力説して来ました。

なので、絶対的なルールとして自然や風景を描く際には黒絵の具を使用しない事。

一見、灰色、グレー、ただの影に対して主題以上に色彩を吟味する事。


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出来るだけ筆を淡白に動かして、水の動きで描かせる事。

安易に色彩を置くなどせずに、私が同意するまで色見本から抜粋する事。

着彩する箇所の手順や、色を置くタイミング、どうしてそうせねばならないのかを事前に論理的に説明し、練習してから着手する事。

下描き以外に、これだけの決め事をしています。

それでも私からすれば一番安全な手法ばかりを選択しているのですが、初心者には相当なハードルになります。

当然「難しい、難しい。」と母は言いながら必死で描きますが、そこに更に「嬉しく描いて。」と追い討ちを掛けます。

そうしないと描かされたような絵になってしまうからです。

 


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ここまで要求する理由は「一枚を完成させる度に飾れるものにしたい。」という母のリクエストに応えるためです。

なので、何となく描いていて偶然出来る傑作タイプの絵ではありません。また稚拙な感じより安定感がないと達成感がないと言うので、教室では出来ない指導となります。

これまで4枚の作画過程を記事にしましたが、今日はその第5弾です。今までの絵が全て壁や建築物による閉鎖空間を描いてきたので、無限の奥行きがある開放的空間をモチーフとして提案しました。下描きだけで3日掛かりました。

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空から着彩して、右サイドの木は滲みのみ、4本の木はフォルムを明確に決める様に指示しました。着彩1日目はこれにて終了。

マスキングを施して、山。この山裾が白っぽく霞んだ感じにするのに苦労しました。手前の雑木を描いたところで終了。

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手前の木と遠い山の間に広がる平原や丘陵は、水であまり滲ませずに横のタッチで入れればいいので簡単だと思ったのですが、これまでタッチを入れずにきたので、母は逆に「どうして良いかわからない。」とパニック状態に🤯

しかも白い壁の家屋に沿わせて、平原や雑木を描かないといけません。ここが透明水彩の面白いところであり、難しく感じるところでもあるでしょう。

でも、慣れれば一石二鳥で両方が出来上がるので楽しく快感になります!

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実際には存在しない樹木の輪郭と平原の間に一泊細く紙残しをしています。0.5mm〜1.5mm の紙残しをすることで、遠目に鑑賞した時の印象が明瞭になり、出来栄えを大きく左右します。


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写真を見ても一切そんな白はないので、発想が出ないでしょうが、これは私が長年の経験で養った感覚であり、理屈ではありません。

家屋はラインぴったりに着彩するのに、樹木は輪郭を詰めないで間を空ける。ここも絵ならではの面白さですね。

 

そして、最大の難関であり、このモチーフの見せ場であるラベンダー系のハーブ畑。ここは色彩設計を私が提案しないととても手が出ないと判断して、いくつかサンプルを描いて、反復練習してから取り掛かってもらいました。

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ラベンダーの色が本当に難しく、重くならない様に紫(ミネラル・バイオレット)を使用せずに、独自に軽くなる色を調合してみました。私自身初めての挑戦なので、色々と思うところがあります。

もう少し青を散らせば良かったなぁと反省。今後の課題として、今回はこれでやり切る事にしました。

 

ラベンダーとハーブ畑はマスキングしたまま、全て手を入れて、家屋も少し締めました。陽の当たった壁は紙をそのまま残すことに。畑の土やわらで初めてこの絵で黄色を使用しました。いよいよマスキングを剥がします。ここまで下描きから数えてのべ8日要しました。あと1日ですね。

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さて仕上げの日。マスキングを剥がしたところに草の新鮮なグリーンを刺して、微妙に白も残すことできらめきを出しました。

手前の畑の葉は予め色を塗って乾燥させた草色の紙を手でちぎってから、ハサミで細かく切ってチップにして貼りました。更にそこに少し着彩して馴染ませます。

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なかなかの力作になりました。母も大喜び! 早速使い古しの額ですが、額装してリビングに飾りました。

このレベルは充分に売れる絵ですが、売るのが勿体ないと思えるくらいの愛着がこもっているのが、何よりです。

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「アトリエ青水彩画教室」と「マンツーマン・レッスン」では、格段の差が出ます。

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