アトリエ青 Atelier Blue

画家・アートディレクター 石田泰也の日々の活動風景をお届けしています

夜の現場

記事のタイトルはまるで警察やミステリードラマに出て来る「夜の殺人現場」のように思われるかも知れませんが「夜に実際の現場で絵を描く」という意味です。

そうして描いた「夜桜」の写真が不意に出てきました。私が透明水彩を初めて20年ほどになるのですが、これはその初期の作品です。始めてから数年は必ず現場で描いていました。

しかし、夜に描いて完成したのはこの一枚だけだと記憶しています。何故かというと色が見えなくなるからです。懐中電灯とかを使うと返って調子が狂うので、勘で着彩していましたが、大抵失敗しました。(当たり前ですが。。。)

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この日は、午後から構図を決めるために大津の琵琶湖疏水に架かる北国橋をウロウロして、ライトアップした状態を予測してポジションを確保しました。パレットに出した色は日暮れと共に殆ど識別出来なくなる事も想定して、パレットのどこに何色を置いたかを記憶しておきました。

軽く当たりを取るくらいは下描きをしたかも知れません。筆洗は三口のものを2セット並べて、計6口にしていました。外で描く場合は水が替えられないので、いつもそのスタイルでした。


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そうやって日が暮れる頃には、ほぼ手元は暗くなって来て私の周りには写真家や見物客が詰め寄って来ました。皆さん構図上、大体同じポジションを狙うので、私の真横で三脚を立てる方もいました。私が先着なので開き直って、微動だにせず「すいません。」と謝りながらも、周りに画材を広げ、腕の可動範囲に干渉しそうな方には「少し離れてもらえますか。」と図太い神経でお願いしました。

その緊張感とか、現場だからこそのライヴ感でモチベーションがドンドン上がって来てハイになり、ヤバい人になっていたと思います(笑)

実際に日が暮れかけてライトアップされた10分程が勝負なので、絵の具の水の含み具合なども色によって直ぐに使えるように量や水分を個別に調整しつつ、待機しました。たぶん現場に来てから3時間くらい経過して、描いたのは15分程度。後は小一時間乾燥するのを待って家に帰ったと思います。

山の稜線は夜一歩手前の紺色の空に滲ませようと考えていましたが、この頃は水の配分などまだ不慣れだったので、滲み過ぎて山が膨張してしまい、パニックになりました。

でも、自分を追い込んで一瞬の打ち上げ花火の様に爆発したパッションが画面に定着しました。雑だけれど、思うようになってないけど、今でも水彩紙に滲む色の動きの速さを覚えているのです。

という事で、今、振り返ってみて全てがいい経験になったなぁと思うのです。受講生さんにも外で描く事を推奨するのは、教室とは全く違う経験が出来るからです。作品は大事ですが、過程も作品ですよ!