アトリエ青 Atelier Blue

画家・アートディレクター 石田泰也の日々の活動風景をお届けしています

後滲み

紙残しの話が続きましたので、流れで紙を残さない話もしたいと思います。ヨーロッパの作家が出している透明水彩のレクチャー本には「ドライ・オン・ウエット」というものが掲載されています。ドライ=乾きですので、水分が殆どない絵の具で先に着彩しておき、その上からウェット=潤い、つまり水分を多く含んだ絵の具を重ねるように着彩するのが「ドライ・オン・ウェット」です。これにより先に着彩した乾いた絵の具が少し溶け出して独自の雰囲気が出せます。但し、これは木の幹のシボ(シワみたいな)や岩や石壁の質感などの凹凸表現に有効で、限られた箇所で使う場合が殆どです。

この技法自体を何度か使いましたが、元からリアリティーに拘りがない私の画風にマッチしない事もあり、知識として温存していました。何かのきっかけで、これを展開させて全画面に水だけ使用したらどうなるかを実験しました。「ドライ・オン・ウエット」との違いを端的に説明するとドライで着彩する際にたっぷり紙残しをしておく事と、ウェットの際は、絵の具は使わずに、水のみにする事です。


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左がドライで硬めに着彩したもので、右はその上に全面水だけを塗っています。空をご覧になればお分かりの通り、白い紙残し部分も微妙に色付きます。

「ドライ・オン・〜」の逆手順の「ウエット・オン・ドライ」という、濡れた状態のところに硬めの絵の具を重ねたり線描すると途端にフワッと滲む技法は更にポピュラーですが、どちらにも該当しないのがこの後滲み」です。

「後滲み」はドライで着彩中に絵の具の濃さや量を加減していますので、滲み出すとそれが広がる箇所と、そんなに広がらない箇所が出来ます。それをある程度逆算するのが難しいですが、後は単純に一回水を塗るだけで、結構思ってもみない表情を見せます。絵が破綻するだけの場合もある際どさが面白いので、精巧な描写や細密な絵を好む方は受け入れられないでしょう。

私は破綻肯定派なので、何枚か描きました。次の作品は、同じモチーフを後日「ウエット・オン・ドライ」と「後滲み」を使い分けて描いたものです。どこがどっちの技法かは複雑に絡んでおり補足説明は無理なのでご了承下さい。

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先の後滲み作品で試した様に、全面に水を塗らずに加減する事で紙残しの消滅を防いでいます。こうする事で、清涼感と軽みが出ます。でも、この絵は全面水を塗った後滲み作品を体感したからこそ発想が出たという意味で、無駄な事や遠回りを存分にした方がいいのです。

最後に後滲み作品例を数点アップします。


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