アトリエ青 Atelier Blue

星つりじいさんの日々の暮らしをお届けしています

遠回り

このところ全く絵を描かず、託児が一番充実した時間になっています。一緒に過ごすと子供にしか見えない世界を教えてもらえるし、如何に自分がボ〜ッとしているかに気付きます。一人の時間は映画を可能な限り観ていますが、絵と同じで10本くらい観て、一本拾い物があれば良い方ですね。その他の9本は良いところがあるけど、脚本が駄目だとか、逆に脚本はいいけど、ロケばかりで予算が余りにもなかったのが惜しいとか、色んな要素で褒めるところと残念なところがない混ぜになっています。でも普通はそんなものです。何か欠点が目に付いたとしても最後まで見る方が良いです。無駄な時間を労することでいい物が何かを知ることが出来るからです。

絵も一緒で、描いていて嫌な予感がしたり、全然上手くいかないジレンマに襲われたりする方が、最終的に得られる収穫は大きいし、地力が付きます。趣味ならばある程度楽しさ優先で取り組めるに越した事はありませんが、絵描きの場合は遠回りをしないと何かを会得出来ません。ここに先日の「初個展の思ひ出」で一番評判が良かった作品をアップします。15年前くらいに描いたのでタイトルも覚えていません。


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この絵の魅力はガラスの様に色が透けて感じるところです。透明水彩の長所を引き出せています。独学で描いていて「初めてオリジナリティーが出たな」と感じた貴重な一枚ですが、当時は経験が浅く、この様な作品になるとわかって描いてはいませんでした。無我夢中で描いていたのは覚えています。

それまでの経験、上手くいった箇所、色々な失敗に潜む可能性を利用したらこうなった気もするし、筆に含む水の量や、乾燥の時間などがいつの間にか身体に入って来た頃にポロッと描けた気がします。


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また全部の色彩が実際の色ではなく、自分がそうしたい色にしたのもこれが最初かもしれません。これも遠回りのお蔭です。教室では影や陰を茶色くしたりグレーや黒っぽくしない様に指導しますが、これもシルエットだからと暗〜くしたら全く面白くない絵になったでしょう。透明感を次々と駆使して描いて行っても、たまたま辿り付いた時の様な驚きはないので、この雰囲気の絵はこの一作以降描いていません。でも自分の抽斗にはしまってあるので人にレクチャーする事は出来ます。

志しをもって絵に向き合いたい人は、出来るだけ色んな戸惑いをして、徐々に戸惑いの質を変化させてみて下さい。そうすれば無駄な時間のようでも着実に力は付いてきます。底なし沼にはまった気分になった時は直ぐに救助します!