アトリエ青 Atelier Blue

星つりじいさんの日々の暮らしをお届けしています

初個展の思ひ出

アルバムを見ていたら、初個展の写真が目にとまりました。アトリエ青ブログを始める前(2014年春)だったので、恐らくこれらの写真を上げた事はないと思います。初個展というのは、何かにつけて印象深い1ページとして刻まれます。


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「十景十色」(じゅっけいといろ)と題したのは「それぞれの風景との出会いは、それぞれの色として迫って来た。」というところから来ています。私には映画館のポスターや看板以外、作品というものを全く描かなくなった10数年という時期がありました。30歳を過ぎてガッシュ(不透明水彩)で復帰して、透明水彩画を独学で習得し、やがて油彩画も復帰しました。

個として絵を描かないと何かに流されてしまうという強迫観念が湧き起こったのが、絵を再開するきっかけでした。この個展は35歳からの十数年で描きためたものと、個展用に描き下ろした数点で構成しました。写真には写っていない小品も結構あります。

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遊び感覚で描いたイラストは即完売状態になり、追加発注を受けるほどの人気があり、自分でも驚きました。「十景十色」というテーマに収まらない絵の方が人に受け入れられるというのも皮肉ですが、悪い気は全くしません。今思えば、テーマ自体が真面目過ぎた気がします。

実際に油彩画の出来栄えには非常にムラがあり、その大きな要因が写真取材してアトリエで描いた事が妥協に他ならないという事でした。


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そういう作品は自分でもおぞましくて見るに耐えないので、全部焼却し、これらの内人手に渡った2点以外で手元に置いているのは2点だけです。その2点の出来栄えが図抜けて良いというのではなく、妥協しなかったから大切にしたいと思うのです。

「燃やす前に言ってくれたら有効に展示で使ったのに」と、有難い善意とお心遣いで申し出て下さる方もいました。私も「そうですか。じゃあ何も燃やすことはなかったですね。」と答えました。でも後々になって、妥協したものがのうのうと世間に顔を晒しているのも我慢できず、やはり燃やしてしまったのは正解で、悔いはないのです。

その後、透明水彩画をメインに画業を展開し、数百枚は描きましたが、呆れてしまうものが殆どです。一応教室の講師もやっていますので、ご要望の絵、一見して上手い絵、出来栄えのいい絵は直ぐに描けます。初個展の時はその程度でした。そうではなく自分が驚く絵、戸惑う絵、下手なのに心に語りかける絵を描きたい!それが今の課題です。

《追記》ついつい忘れがちですが「意識的に描く」のではなく、結果的に「描かせてもらえた」というスタンスが一番望ましいことを肝に銘じなければなりませんでした。