アトリエ青 Atelier Blue

星つりじいさんの日々の暮らしをお届けしています

暗さの魅力

セルビアの友人を紹介する3回目。今日はゼムンに住むニコリッチ・ミリツァです。彼女はグラフィック・デザイナー、フォトグラファー(写真家)です。直接会ってはいないのですが、同じくゼムンに家がある友人ボシコとの交友関係がある事から間接的にFacebookで繋がりました。写真は彼女の個展の様子。

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※真ん中がニコリッチさん

彼女は一時期、頻繁に風景画をFacebookに投稿していた私にメッセージをくれました。自分が関わっている広報誌に私の絵を紹介したい。そして取材をさせてっても良いですかと。私は二つ返事で快諾しました。サイトもご覧になれます。正直言ってこの頃の絵は落描きのレベルで酷いものばかりで、今となると気恥ずかしいです。

http://www.blic.rs/vesti/beograd/carobno-mracni-grad-evo-sta-je-japanskog-slikara-inspirisalo-da-od-motiva-beograda/58lycmp

内容を日本語表記にすると以下の様になります。

魔法のような「暗い」都市ベオグラードのモチーフが日本の画家にインスピレーションを与えた

取材記者:アナ・リストヴィッチ

セルビアの首都ベオグラードの隅々を愛でて、石田氏は水彩画でそれらを不滅にしました。ゼムン、聖サワ大聖堂、キングミラノストリート、カレメグダン、旧サヴァ橋は、ベオグラードへの1週間の旅から戻ったときに、石田氏の作品として溢れ出ました。なぜなら、その芸術家が言うように「セルビアはまだ彼の心の中にある」からです。石田氏にいくつかの質問を投げかけました。

【記者】セルビアとの縁と何故描くのかを聞かせて下さい。

【石田】2013年に、私は勉強した絵画への愛着を取り戻そうと、映画館での仕事を辞めました。 旅行でセルビアに行き、国際的な芸術家と愛好家からなる「国際芸術交流協会シロカ・スターザ」が主催する展覧会に参加し、セルビアにすっかり魅了されました。小さな隠れ家的な町、静かな雪の夜、そして街の建築とその光が最も注目を集めました。より正確には、それらの暗さです。ベオグラードの中世の建築と現代の日常生活の調和は並外れています。 私は自分が描く風景画の世界に足を踏み入れたような気分になり、とてもリラックスできました。ここに引っ越して暮らしたいとも思いました。

セルビアの最大のインスピレーションは、良い意味で、日本よりもはるかに暗いという事実でした。 日本では、ギラギラと光るショーウィンドウや車のライトが強すぎて邪魔になり、街はとても下品で色に調和がないのです。 私の風景のテーマは正反対で、人間の魂を放ち、その暖かさを感じたいという傾向があります。 残念ながら、セルビア滞在中は絵を描く機会がありませんでしたが、帰国後、セルビアをモチーフにした水彩画を何枚か描くことができました。

【記者】セルビア人の印象はどうですか?また何が特に記憶に残っていますか?

【石田】セルビア人はとても暖かくて正直です、私は特に彼らの素直さが好きでした。 外面は静かで恥ずかしがり屋かもしれませんが、内面はとても情熱的で、思いやり深い事に好感を持ちました。 日本人も見かけは控えめでもの静かだと思われているかもしれませんが、本質を出さず、その割にプライドだけを持っているが、空虚な性質の人にたくさん出会いました。 私にとっては、セルビア人と話したり、時間を共にする方が有意義に思えます。 私にとって特別なイベントは、ベオグラードの「国連」小学校の生徒たちと一緒に開催した3時間のワークショップでした。 それは本当に楽しい時間でした。 子どもたちの想像力を刺激し、一緒に働く私も刺激を受けた素晴らしい機会を決して忘れません。

【記者】あなたはまたセルビアに行きたいとのことで、いつかセルビアに家を見つけたいという言葉からも、セルビアがどれだけ好きかがわかります。

【石田】2017年の秋か冬にまたセルビアに来る予定です。1ヶ月くらい滞在すると思います。 私があなたの国を訪れて以来、新しい素晴らしい道が私の人生に開かれました。 正直なところ、到着前はセルビアのことをあまり知りませんでしたが、今はセルビアのことを考えない日はありません。

石田氏の大きな夢は日本とセルビアをアートでつなぐことだと明かしています。 その中でなされた友情は助けになります。偶然入ったガラスランプ店のオーナー、ゾラン・パニッチと友達になりました。 その後、セルビア人と日本のアーティストによる造形美術の共同制作を通じて共同作品制作とインスピレーションの交換の機会を提供することを目的としたアートグループ「Hrast」を彼と結成しました。(2016年12月)

古い記事ですが、要約するとおおよそこの様なものです。興味を持ったら自然体でコンタクトして来て取材してくれる。この感じが嬉しいですね。だから私も同じような感覚でセルビアと交流しています。その後2017年に渡航しましたが、ニコリッチさんと時間を共にする機会はありませんでした。それでもお互いにFacebook上では活動を見せ合っています。彼女の写真はギャラリーで販売されているので、Facebookで見られるものはごく一部ですが、最近では廃墟を女性が訪れるという物語仕立ての写真をアップしていました。

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アンドレイ・タルコフスキーの映画のワンシーンの様な静寂に興味が湧きます。

 

彼女の近況写真からも伝わると思いますが、この心地よい暗さ、穏やかで静謐なトーンが先の取材で私が語っていたセルビアの暗さの魅力、そのものです。対極にあるスマホの自撮りやプリクラには辟易してしまうのは、当然ですね。


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ニコリッチ・ミリツァさんのgalleryはこちらです。

https://milicanikolicphotography.blogspot.com/