アトリエ青 Atelier Blue

画家・アートディレクター 石田泰也の日々の活動風景をお届けしています

公開講評②

各受講生の作品をブログで講評するのは初めてですが、今回はチラシに出展者を明記しましたので、一人づつコメントをして行く公開講評その②です。

今日は棈松典子さんの2枚。タイトルは左から「城壁の街オビドス」「坂道のある街」です。私が今はなくなった某カルチャーセンターで講座を開講していた頃からのお付き合いで7年は習われていらっしゃる方です。

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ここ2年ほどは思い切って大きな作品を描かれるようになりました。大人の教室では、紙が大きい事を恐れる傾向にあります。子供は全く躊躇せずに、広場を走りまわる様に描きます。それに比して何故恐れるのか?

これは単(ひとえ)に手に負えなくなるのではないかという不安が先行するからです。遊びきれない心理が喜びを抑えるのです。一番いけないのが失敗した時に画面の大きさに恥ずかしさが比例するという思考です。社会に出るとミスを責められますし、豪快に失敗して褒めてくれる会社はないでしょう。社会性の中でリスクを背負う事を避ける癖が付いているのが大人です。

だからこそ自分の自由に出来る好きなこと(遊び)で大失敗すれば、本当は小さい失敗が気にならなくなるといういい効果があるので、大きいものを薦めるのですが、やっぱりまだやめておきますと全員が仰ります。まあ、無理強いはよくないですし、私は学生の頃だと5メートルや7メートルの作品も描いていましたから、感覚が麻痺しているのでしょう。

棈松さんは一回大きな紙を渡して「これに描いてみて下さい」とお願いしてから、開眼されました。逆に大きい方が描きやすいとも仰います。「坂道のある街」は東山魁夷画伯の画集の中に載っていた写真を見て描かれました。古い街ならではの郷愁に溢れており、石壁の質感も出ています。

「城壁の街〜」には実際に行かれたそうです。白壁の家屋の陽当たりは全て紙残しです。オレンジの瓦屋根が単純にならないように微妙に色を変えることを勧めました。屋根をオレンジや黄色だけで着彩してしまうと、イメージ画のようになり鑑賞に耐えません。だからと言って茶色でくすませても意味がありません。茶色には大量の赤と黄色が入っている為、何も面白い色合いにはならないからです。黄緑・紫・青を少量使い分けるだけで見違えるほどの深みが出ます。

このサイズになると家で飾っても窓からの眺めが出来たようになりますので、これからもどんどん大き目の絵を描いて、箸休めならぬ、筆休めで小さいものも描かれるといいでしょう。

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