アトリエ青 Atelier Blue

画家・アートディレクター 石田泰也の日々の活動風景をお届けしています

蜜月

イラストレーションの連続投稿から一転して「風景画」を2枚。以前にも既にご覧に入れている作品ですが、何故再度アップするのかと言うと、人の手に渡る事が決まったからです。プロの画家を名乗っていながら私の場合は売れる予想を立てて(需要を見越して)描くことがありません。イラストの場合は愛着の持てるインテリアとなればとか、注文依頼が多いので、当然クライアントが何を期待して私にご依頼されたのかに真剣に耳を傾けて臨みます。

ところが、こと風景画に関してはそうならない理由を考えてみると、完全に私との密会だからです。蜜月と言い換えても良いかもしれません。そうなると、もうそこは2者だけの世界。私の心を捉えたものに対する賛美を相手に対して捧げる想いで満たされてしまうのです。

そこにはそれを第三者が好む好まないなどの意識が入り込む余地がありません。だから何かのご縁で、どなたかの眼に止まり、前述した感じで私が描いた風景画を買いたいと仰って頂ける時、有り難いと思うより先に、意表を突かれた思いにかられます。


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一作目は、2017年のベオグラードの個展で発表した白い路駐の車が印象的な作品。この車の持ち主は近くの家屋にいて、時間が経過すればいづれ乗り込んで移動するでしょう。それまでの間合いを無意識に表現した気がしています。車は意識を持ちませんが、もしこれが繋がれた馬とかであれば「いつまで待つのかなぁ」とか、案外「もうちょっとこうしていたいな」なんて思っているかも知れない。後付けですが、一台の車をどう見るかによって無機的なものが返って絵になるのです。

画風は一転。二作目は2021年の作品です。

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本作には木や土の道など有機的なものはありませんが、西陽によってあぶり出された蠢く街の風情があります。これらをトータルで捉えた上で、自然光によって陰と陽に括られてしまう印象を強く感じた。その時に受けた感銘を描きたいと臨みました。本作は個展などの展示会で未発表のまま人手に渡りますので、原画を観たのは教室の数人の受講生に限られてしまいました。

どちらの絵もいい蜜月を風景と共有出来た思いで、そこに浸っていただけに、唐突に原画が手元から消える事に動揺しています。やはり意表を突かれた感覚です。だからこうして再度アップする事で、喪失感に対して区切りを付けられればと思った次第です。

しかし、自分が面白いと思う絵が売れるのは画家として非常に有難い事なので、これまで通りのスタンスで新作に向かえるように願います。