アトリエ青 Atelier Blue

画家・アートディレクター 石田泰也の日々の活動風景をお届けしています

トローネルの映画美術

アラン・ドロンの映画に「パリの灯は遠く」というあまり知られていない作品があります。邦題から醸し出されるムーディーでドラマチックなものを期待してDVDを買ったら、のっけからそういう映画でもなく「太陽がいっぱい」のサスペンスやロマンス的な要素は皆無、そもそも1942年当時のドイツによるユダヤ人弾圧を描くという時点で娯楽作品になり得ないのですが、これはいい意味で裏切られました!

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まずこの青みがかった画面に目が奪われ、私好みなのはもとより、それだけでない何やらただ事ではない画面密度を感じたのです。特に主人公の住むアパルトマンの室内空間の魅力は筆舌に尽くせないものがあり、匂いまで感じるのです。

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映画は1976年制作ですが、あくまで1942年のパリが舞台なので、普通にロケ撮影をしていないのですが、そもそも何処が当時との違いかは日本人の私には分かりません。にも関わらず、何故か濃密に再現されているであろう説得力を持っているのも不思議!

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映画を見終わってパッケージを眺めていたら美術監督アレクサンドル・トローネルである事がわかりました。彼はフランス映画に止まらず、アメリカに渡り、ビリー・ワイルダーなどとも仕事をした事で有名ですが、改めて調べてみると元々は画家を目指して勉強して、映画美術の世界に没入したらしい事が分かり、セットのデザイン画なども出てきました。

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何というか、本気度が桁違いのパワーですね! 桁違いというのは、何を基準に言っているのか自分でもよくわからないのですが、自然にそこにある風にしか見えないものを描く力量とでも言いますか!?

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とにかく、熱い志しを込めて楽しんで仕事をしていなければ、こうはならないとう事だけは理解出来るのです。とても私には太刀打ちできない芸当であり、映画はやっぱり観て行かないといけないし、絵の勉強に繋がっている事を改めて感じたのでした。


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これは担当したセットでふざけるトローネルです。遠近感を出す為に道幅を奥に行くに従い細くしたり、建物も小さく作っているのでしょうが、人工的な感じがしない。

三次元で絵を描く様な軽やかさが、ここにはあります。