アトリエ青 Atelier Blue

星つりじいさんの日々の暮らしをお届けしています

省略話法

今年に入ってから殆ど絵を描かずに、2日に一本くらいのペースで映画を観て暮らして来ました。映画ソフトを12本程買ったので、これからも見続けますが、そろそろ絵も始めようかなという気分になってきました。映画はやはり観ればみるほど、時間の扱いが面白いなぁと感じます。映画の最大の表現は省略だからです。省略とはいえ、手抜きとか排除ではありません。  何か事が起こったと鑑賞者に想起させて見た気にさせる演出、これが省略話法です。間接話法というのもありますが、これについては読者の方でググって下さい。

簡単に具体例をあげると、花屋の花のアップのショットに続いて、登場人物の部屋にその花を指した花瓶のショットが来たら観客は「ああ、花を買ったんだな」と理解します。つまりこの2つのイメージだけで、実際に花屋で花を買う場面や、花瓶にいけるシーンを想起します。エモーションと言いますが、これは映画の様に時間が流れていないと表現出来ないのです。

圧倒的な視覚スケールや、膨大な制作費を投入せずとも映画表現が研ぎ澄まされていれば、エモーションで色々と見ることが出来ます。逆にそれが不足しているとどんなに大層なセットを組んだり、ビジュアルに力を注いでも映画にはなりません。その意味で映画は音楽のような時間芸術の要素が重要となります。絵は鑑賞時間を鑑賞者がある程度自由にコントロール出来る点で、時間芸術ではないと言えます。じっくりと眼で見て作品と対峙する行為が映画にも似ているようですが、かなり違います。

今日は水彩画教室で、映画の省略話法を絵に応用すれば絵は破綻するのだろうか。。。そんなことを意識をして描きました。

f:id:IshidayasunariART:20190123161737j:image

実際に一枚の絵で省略話法など不可能なのですが、雪景色なのに寒色を使わないというアプローチが鑑賞者に戸惑いを与えて、時間そのものに向き合わせる仕掛けかと思います。絵の場合、時間が止まった表現によって逆説的に時間を意識させる事が可能ですが、その時間の中で省略話法を如何に達成するのか!?    これは挑戦しがいがありそうですし、わくわくしますね!