アトリエ青 Atelier Blue

星つりじいさんの日々の暮らしをお届けしています

絵を描かない日々

 

約一カ月のセルビア滞在も残すところ一週間を切ってしまいました。

当初は20枚くらいの絵をこちらで描くつもりでした。

それは一カ月もいれば、一人で結構時間を持て余すだろうと予想しての事でもあったのですが、実際はそんな時間が全くなく、友人とずっとアートな時間を過ごしています。

 

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一緒に構想して次のビジョンを語る。

一緒に困難を乗り越えるため、実現に向けてディスカッションを続ける。

 

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合間にリラックスしてお茶を飲んで、冗談を言う。

そして何か閃き大騒ぎをする。(笑)

 

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ずっとこんな感じです。

 

これまで夢と挫折を繰り返して来た人生の中で、それでもお互いを深く理解して、人を裏切るのだけはしたくない。それをしたらもうアーティストではなくなる。私達はそれが一番怖いのです。

人に裏切られて、その時は傷付いても実は失うものはないのです。

 

逆に裏切って瞬間の利益を得た方は、そこで全てを失います。

友情を失うのです。

 

そんな話を英語が殆ど話せないのに、価値観が近いと何ら壁は感じずに語り合えるのです。

 

たまたまイランからやって来て工房で数日間一緒に時間を過ごした弱冠23歳のカタユーンが、平均年齢5?歳のアートグループOAKの中で、妥協せずに高いポテンシャルを保ちランプを作りあげました。

 

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2面で配色を変えたのが彼女のこだわりです。

 

明日はイスタンブールに飛ぶので、一緒に工房にいるのが最後の日になりました。

これまで、本当にこだわりを真っ直ぐに示して、よりベターな物を作ろうと我々にアドバイスを受けて、良いものは受け容れて、違うと思ったものは捨てる。

 

それは我々年輩の作家からすれば一番嬉しい態度なのです。

 

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カタユーンは夕暮れに、感謝の言葉を口にすると静かに涙を流しました。

美しい光景でした。

 

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これこそが我々への褒美であり、真の報酬なのです。

 

ランプ作家ゾランは、当たり前の事をしているだけだから気にするなと言いました。

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私も同じ感覚でした。

 

今日はお別れの日じゃないんだよ。君がイランに帰ってもずっと友達だ。これから君のイランのアートの教授もプライベートで誘って合同展示会をしよう。

 

当然の様に話は前に進みました。

私はもちろん最後まで付き合うと宣言しました。

 

そうしてカタユーンを通じて、今度は我々日本人・セルビア人アーティストがイランの美術工芸から多くを学ぶ機会を得るのです。

損得や売れる売れないなど全く度外視して、若者のアーティストをステージに上げる。

そうすれば我々は満たされて死んで行けるのです。

 

言い方が悪ければ生き切れるのです。

 

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だから師弟関係でもないし、アート仲間という訳でもなく、ただの友人なのです。

カタユーンと別れる時に「Welcome to OAK!  Don’t cry!」と言葉を投げました。

 

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彼女は満面の笑みで「Thank you Zoran, Thank you Yasunari see you!」と言って夜のベオグラードに姿を消したのです。

 

絵を描かない幸福な日々は、そろそろ一旦終わります。

 

 

♯アートグループOAK  ♯セルビアアート