アトリエ青 Atelier Blue

星つりじいさんの日々の暮らしをお届けしています

孤独の魅力

大好きな俳優、故 大杉漣さんは2018年に66歳で依拠されましたが、還暦を迎える年に出演された番組を見る機会を得ました。読書の方でもきっとご覧になられた方がいらっしゃるでしょう!

大杉漣さんとは、もう10数年程前になるかと思いますが、私が映画館勤務時代に部下が大杉漣特集を企画した際に、ゲストでお越し頂きました。舞台で一緒にトークをし、その後200人を超えるお客さん全員とのツーショット写真に応じて下さるなど、その物腰の柔らかさや、周囲への気遣いに感動したものです。

役者・俳優 以前に人間としての在り方を大いに学ばせて頂いた人生の先達として尊敬し、今でも映画を観る度に良き思い出として蘇ります。

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旅のチカラ は、そんな大杉さんがスペインにフラメンコの武者修行に行くドキュメンタリーですが、凄い内容でした。

フラメンコを教わるマエストロの弟子から、最終日に次の様な詩をプレゼントされたのです。

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これが私の孤独だ

今は離れて静観してみる時だ

いつも一人でいたい訳ではない

でも、私は自分の孤独に魅力を感じる

一人でいることが好きでもあるが、それは私を傷つける

しかし、私は私自身である必要を感じ

私自身を感じることができるのだ

 

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この詩は38歳のフラメンコダンサーが数日共有した時間の中で急に思い立って書き留めたものだそうです。

この年齢でこれほど確信を得た言葉の表現が出来ることに驚きますが、正に私の様な拙い絵描きであっても、この詩はグッと来たのです。腹に刺さった様になって、パッと景色が開けた様に感じました。そうだ「私の絵も孤独の魅力が出せたかどうかだ!」と。

その時に絵の前で釘付けになる様な気がするのです。頭で理解するものではない。やはり、不意にやられて言葉失う様な作品を今後描けるかどうか?

大杉さんはこの詩を受けて即興のフラメンコでもない芝居でもない得体の知れぬパフォーマンスを演じました。

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そして、フラメンコのマエストロの包み込む様な言葉に感極まり、とうとう堪え泣きする大杉さん。

清々しい涙と共に、大杉漣の修行旅は一区切り付いたのでした。

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先の映画館のトークショーでも20分の枠で構成していたに関わらず、2時間以上に延びて、オールナイトで上映とトークが続いたのでした。通常は疲労困憊するのですが、この時は場が一体となって200人以上の観客と私たち映画館関係者10人程度が満面の笑みで朝を迎えたのでした。これは得難い経験として関係者の間でも語り草になっています。

この時、枠に収まっては何も意味がないというメッセージだったのでしょう。同様にドキュメント番組からも、やはり同じ既成の枠を超えたものを模索し、はみ出さなければ何も生まれないという強い信念を垣間見たのです。

また大きな学びを頂けて感謝の念にたえません。

ゾランからの便り

昨年、ステンドグラス店を完全撤退してベオグラードに暮らす家にアトリエを移した友人ゾラン。隠居生活しながら作った近作(写真)を送ってくれました。それを見て「ランプも灯らないし、質素だし、商品には不向きだし、一体どうしたんだ。これじゃ、お爺さんの趣味じゃないか」と冷ややかな目線を送ってしまったのです。しかし、本当にそうでしょうか。。。

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彼は日本からインスピレーションを得たと言います。わたしには意味不明です。


私達は一緒にアートグループOAK、そしてアート&クラフトを立ち上げた果てに、色々な裏事情が重なり、彼の引退を節目に全て幕を降ろし、活動を休止したのですが、それはまるで蝋燭の炎をパッと吹き消した様な数年の瞬きでした。


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          2016年の展示会準備中のゾラン


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      コラボ作品をセルビアで限定公開した様子

 

これまでゾランとの逸話は数知れず投稿して来ましたので、繰り返しは避けますが、これはゾランが作りたくて作ったものでしょう。

ニーズやインテリア性は度外視して、ただ思うまま作った。

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だから癖もつよいですが、彼の人柄がそのまんま反映されています。意思がはっきりしているけれど、柔らかい。そんなゾランそのものだと。

それは素人の趣味ではなく、玄人が趣味でつくった味です。

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想いを交換しては、私はまたセンチメンタルになって泣いてしまうのでした。

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