アトリエ青 Art Studio Blue

画家・アートディレクター 石田泰也の日々の活動風景をお届けしています

未完成ではなく

セルビアのゼムンあたりから遠くにノビベオグラードの無機的なアパルトメントが見える写真を見つけて、久々に描きたくなりました。ノビベオグラードというのは古代都市でもある首都ベオグラードに対してドナウ川を挟んで開発された新興住宅地一帯を言います。ノビニューと同義語です。

日照条件をデザインに取り込む上で高層でありながら積み木をズラして積み上げた様なフォルムが何とも奇妙です。画面の40パーセントが白い紙のままですが、未完成ではなくこれで完成です。

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家を描けば車が出たり、影を描けば陽当たりを感じる様に並行して画面が出来上がる様に配慮しました。一番印象に残るのが真っ白の紙の部分になれば!という計算です。こんな風に一見柔らかいようで強い心象が立ち上がるのは、一途にベオグラードに戻りたいという感情からです。無性に向こうの知り合いに会いたくて仕方がなくなる時があります。不思議なのは、ホステルのオーナーや犬、食堂のおばさん、ハンドメイド靴屋のおやじなどの顔が頻繁に眼に浮かぶ事です。そんな時は切なくも温かい気分になります。

2017年の秋に渡航して以来、止むを得ず日本にいる感覚がまだ拭えません。それどころか、その違和感は日に日に膨らむ一方です。日本にいる利点は絵描きで生きることの居心地が悪い事だと思うようになって来ました。私は楽しくて仕方ないのですが、多くの方が大変だろうと気の毒そうに接して来られます。なので居心地が悪いという表現になるのですが、そういった事はヨーロッパではあり得ません。でも、自分を奮い立たせるにはこの日本の環境が今は好都合だと考えるようにしています。

今日の絵は、そんな強い衝動を静かに定着させた気がします。