昨日はマジックリサイタルで、シ・オ・ミ 師匠の渾身のステージに打ちのめされる幸福感に浸りました。それは、私が昨年のセルビアでの個展でいきなりセルビアへのラブソングを唄った様な唐突さ、そこに居合わせた観客が、一瞬何事かと思いながらも立ち尽くすしかない。それに似ていたのですが、師匠の場合は、それがそのまま2時間続くというとんでもないステージ。
そして、それは全て自分やパフォーマンスが主役でなく、マジック界を支えた方、ご自身を支えてくれた方、マジックを開発した方々への感謝をパフォーマンスを通じて語るものでした。
37年前に京都のお好み焼き屋で出逢ったロバート・デ・ニーロとの逸話を語る際に、私の描き下ろした絵を使って頂きました。私自身もこの絵を師匠に捧げる為に描きました。デ・ニーロを筆頭にハリウッドの映画人の多くはマジックを愛し、マジシャンを応援されていた事実を知りました。
また、先達への敬意を最大限に払いながらも、若手の実践の場も用意される器の大きさに温かい配慮を感じました。アシスタントをしているダイちゃんは赤ちゃんの時から師匠が見守って来られた近所の息子の様な存在。彼もこの後、マジックを手際よく見せました。
そして、ラファエル原という芸名でマジシャンとして育てられて、今はマジックより閃光の催眠術師として日本で一番になった愛弟子の十文字幻斎氏のキレの良いパフォーマンスは会場を圧倒しました。
愛弟子から師匠への感謝の言葉に胸を詰まらせる師匠。全てがライブで仕込みは一切ありません!
これまで私も様々なイベント、ステージで出演させて頂いて大好きだったこの空間。スカイプラザ浜大津のリスニングルーム響は諸事情で今回をもってラストステージになります。
ここに集ったファンやパフォーマー、本物のハート。全てはこの場所の記憶に変わって行きます。
私はフェリーニの「81/2」という映画の祭りの後の野外の映画セットが重なりました。
リスニングルーム響よ、ありがとう! アートの火が静かに消えて行く寂しさ。これも人生に似ています。アートの価値は作品そのものにはなく、それに心を震わせた送り手と受け手の間の見えない想いに宿る。私と同じポリシーを見事に体現された師匠に敬服するしかありません。